RAY ONE-MAN SHOW 「全部、花 花と唄い、死ぬ」(12/30 渋谷WWW)
タイトルからして穏やかではない、2024年の末に開催されたRAYのワンマンです。
入場したらまずステージ縁に敷き詰められた花が目につき、その奥にはメンバー人数分のシンバルと、それに乗ったメンバーに対応する花。モニターには赤い影のついた題字。異様な雰囲気がパンパンのWWWを包んでいました。
そんな中始まった1曲目はサイン。エレクトロでダンサブルなこの曲、VJ、ダンスとの相性も抜群で今回のライブは視覚でも楽しませるという意思表示。もうここから待ち受ける音の饗宴への期待はさらに高まりました。
そして鳴り止まないアウトロの中で、徐々にリズムが変化しメロディが混じり始め、内山さんの「Love Song」が聞こえたとき、今日は音楽が止まらないライブになる、その予感に震えたのを覚えています。
3曲目の尊しあなたのすべてを、過剰な鮮やかさが内包する不穏さ、メロディーの美しさと重たいサウンドが花で埋め尽くされたステージとの相乗効果で何倍にもなって打ち込まれます。
TESTではうってかわって無機質な印象のダンス。愛海さんがバチバチに決まってました。17で引き続き温度低めながらも光が見え始め、続く星座の夜空で一気に光が溢れます。照明・VJも相まってここの解放感はすごかった…。
大喝采のフロアに、さらに新曲starburstが追い打ちをかけてきます。イントロの振りのかわいさ、コットまおコンビのラップの楽しさ。新曲ながらフロアもノリノリで多幸感でいっぱいになりました。
この盛り上がりに続いたのは逆光。「光」を共通項として持ちながらここまでとはっきり変わるサウンド、この移り変わりができるのはRAYならでは。そしてシームレスにネモフィラ、夜来香迴旋と重厚なノイズに包まれていきます。
花にまつわる曲からの満を持してBloom、そしてフロンティア、See ya!はこのライブで最もアクティブで高揚感のあるパートでした。
Bloomでどちらかというと淡々と刻まれるビートがフロンティアではっきりと前面に現れ、See ya!でダンスと有機的に結びついていき爆発する流れ(紬実詩さんが神がかっていた)はアイドルRAYの真骨頂ともいえる至高の時間でした。
演者がはけてここで終わりか…?と訝しんだところに一節の語りが響きました。
「秋の花が好きな人は、秋に死ぬんだって」
巡る季節、そして花と死。否が応でもこのライブのキーワードを思い出してしまいます。朗読が続く中で、音楽は続いていることに気づきます。繰り返しの中でグルーヴが生まれ始め、時にノイズが混じるそれはまぎれもなくRAYの音楽でした。
一種のトランス状態になった会場で再び幕を開けた最後の曲はしづかの海、低めのBPMとギターの響きはこのライブで最も死のイメージに近いものです。フロア全体で盛り上がっていた先刻とは異なり、自分以外にRAYだけしか感じられないような引力で、でも葬式のようなしめやかな終わりではなく、終わりに向かう中でひときわ激しく、美しく生命の燃えるような輝きがありました。
シンバルを叩く姿が淡々としていたり猛烈であったり、花もボロボロと崩れるものもあれば一度の衝撃でぱっと散るものもあり。偶発的なものも含めてメンバーの個性が出るところにはアイドルらしい表現と感じつつ、その中で極限まで研ぎ澄まされたものを見せてくれるのはRAYの特異性であり、目が離せないところでもあります。
2024/12/30(月)
— RAY (@_RAY_world) December 30, 2024
RAY ONE-MAN SHOW
「全部、花 花と唄い、死ぬ」SETLIST#_RAY_world #RAY1230WWW pic.twitter.com/rOzO6Dg1EQ
ここからはファンというよりひとりの物語を愛好する人間としての感想になりますが、はっきりしたコンセプトを、ライブという形式の中で、テキストによらず物語っていたことがとんでもないなと感じています。RAY ONE-MAN SHOW「全部、花 花と唄い、死ぬ」ありがとうございました!今後ますます野心的に挑戦していきますので、皆様応援のほど、何卒よろしくお願いいたします⚡️ pic.twitter.com/zfpJ61Otik
— RAY (@_RAY_world) December 30, 2024
人は言葉を聞けばそっちに引っ張られてしまう生き物で、なので歌詞の印象もこういう場面では特に強く出るものだと私は思っています。ですが今回(RAYのライブではしばしばあるように)場面によってはボーカルが聞こえにくくなるほどの轟音もあり、その分オケのサウンド、そして何よりパーカッションのビートに比重が寄っていて、その上で生と死を巡るコンセプトを感じられる作りになっている衝撃。
VJと花のビジュアル、ダンス、(ボーカルも含む)サウンドがまずそこにあり、それを体で感じて時にメンバーと共に踊る中で、圧倒的な生とその結末としての死を体感する。
これだけの体験をさせてくれたチームRAYには改めて敬服の念を抱かざるを得ません。この先も素晴らしいものを作ってくれるだろうと期待しつつ、でもこのライブは歴史の中で唯一無二であり続けるだろうとも思っています。
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