2025年9月19日金曜日

音源とライブの距離感からRAY『White』を語る

 

1 おとぎ

初披露:2024/9/21 RAY現体制2周年記念ワンマンライブ「Perennial」

この最上級の美しさのイントロからアルバムがスタートするのがたまらない。語りかけるようだったボーカルが激情を帯び、轟音アウトロへと流れ込む芸術的な展開。

ライブでも、それまでの流れに関わらずイントロで一気に空気を変えるパワーのある曲。

個人的に印象的だったのは、RAY×ベルハースプリットツアーの名古屋公演での、臨時3人体制での披露。当時は3人で魅せられる曲を模索して奮闘しているタイミングで、この曲を取り入れたことでセトリの完成度を高める最後のピースがハマった気がした。


2 星座の夜空

初披露: 2024/5/3 「The Most Cutting Edge Alternative Idol」

どの楽器もポジティブな音を鳴らしている。ボーカルもエネルギーに満ち満ちていて、素直にロックの良さを浴びせてくれる。

ライブではテンションアゲアゲにしたいときに歌われてきた曲。最近だとくさのねアイドルフェスの野外ステージが印象深い。今の印象だと、初披露の映像もまだおとなしく感じるほどだ。なんせ今ではイントロで内山さんは「イエーーーイ!」しか言わない。でも、それが一番いい形という確信がある。初披露から1年以上、ライブとともに育ってきた曲。みんな育った結果の「イエーーーイ!」を愛している。


3 See ya!

初披露: 2024/5/3 「The Most Cutting Edge Alternative Idol」

今のRAYの方向性を決定づけたのはこの曲だと思う。曲スタートから3分ボーカルが入ってこない、アイドルとしては珍しいスタイルの曲。

度々インタビューで語られているが、現在のRAYはライブを意識した曲作りをしている。See ya!はそれを体現するような曲で、ライブにおける演者と客のコミュニケーション、その最たるものとしてリズムを体で感じさせることに特化している。それゆえ、数々のライブで重要な役割を果たしてきた。

ライブ映像でもわかる通り、みこちのシャウトが後半の主役といってもいいほどの曲。シングル配信の音源だとシャウトはなしだったが、アルバム版ではエフェクトをかけた形で表現されている。

多くの場合(特にアイドルだと)音源はライブに先立つものだが、これはライブから音源への、ひとつの解釈、翻案だと思う。

音源では表現しきれないライブの空間的な高揚を、それでも表現しようと挑戦するRAYチームの姿勢を私は尊敬している。


4 Bittersweet

ライブ未披露

クレジットで衝撃を与えたアルバムのリード曲。あのRIDEの…とネームバリューで身構えていた気持ちを笑い飛ばすような爽やかなサウンド。イントロで音が重なるにつれてワクワクしていく音楽の根源的な楽しさがある。軽い気持ちで聞きながら、気づけば期待が高まっていく。

意外と今までのRAYにないリズム感の曲なので、ライブだとどんな形になるのかが気になる1曲。

序盤の流れは歌詞とサウンドの関係で見ても面白い。

抒情的なおとぎ、語感の良いフレーズが並ぶ星座の夜空で日本語ロック的に味わう→See ya!で言語的感覚が薄まる→英語詞のBittersweetで軽やかなボーカルを楽しむ、と良い緩急が生まれているのも曲順の妙。


5 starburst

初披露:2024/12/30 RAY ONE-MAN SHOW「全部、花 花と唄い、死ぬ」

今となってはライブでおなじみの曲。初披露時は星座の夜空と星つながりで、高いテンションを煌めかせた曲。イントロのかわいい振り付けが印象的で、アイドル現場っぽくコールの入れやすい曲でもある。

要素を並べるとRAYの中でもポップで聴きやすい方の曲に思えるし実際間違っていないが、激しい変化のエネルギーを感じさせてくれる。コットまおのラップパートも含めて、瞬間の輝きのニュアンス。

音源で聞くとリズム楽器の気持ち良さも細かい音のいとおしさもより精細に感じられる。歌詞の表記も凝っていて、これを知った上でまたライブが見たくなる。


6 アップサイドダウン

初披露:2025/2/2 RAY Presents「Relationship vol.9」

最大限にポップで、どこかノスタルジックでもあるメロディー。一方で間奏のギターの分厚さにはRAYらしさもある。アイドルポップス側からオルタナティブに接近した曲かもしれない。

初披露は楽曲提供したCoupleとのツーマン。珍しく?かわいさに振り切った曲ということで当然のように人気曲になった。おとぎとは別の意味で空気を変える曲。イントロが流れた瞬間、「1秒たりともステージの上を見逃せない」という気持ちになる。


7 NO WAY! LIFE GOES ON!

初披露:2024/11/3 Hearts+ presents「秋のYOIMACHI」

イントロのシンセで一気に引き込まれ、ギターが絡まればもう止まらない。2分少々の短い曲だが、その中に「ライブ」が詰まっている。

中盤から流れ続ける「NO WAY! LIFE GOES ON!」のコーラスはファンの声を収録したもの。MVも公開レコーディングの際の映像が取り入れられている。

そういった経緯もあって、ライブの盛り上がりをそのまま表現したかのような曲。音源を聴いているだけでも、メンバーを近くに感じられる。


8 plasma

初披露(予定):2025/9/21 RAY ONE-MAN SHOW「GROOVE! GROOVE! GROOVE!」

唯一リリースまで謎に包まれており、満を持しての登場で上がったハードルを飛び越えて衝撃を与えたこの曲。See ya!と同じくボーカルがなかなか入らない系だが、一筋縄ではいかないリズムはWOZNIAKのカラーが全面に出ている。

タイトルの通り、不安定で抗いがたいきらめき。メンバーの声は時にリズムを構成するヴォーカリーズになり、時にクールなメロディーを奏でる。

ライブで何が起こるかはわからないが、ヤバいことは明らかだ。

この曲はドラムが3台で構成されているが、初披露となるワンマンライブではそれが再現されるというのがまたヤバい。


9 sunset hurts

ライブ未披露

前曲とはうってかわって無骨ともいえるドラムから始まる曲。安心感も相まって、鮮やかな世界にすっと連れていかれる。初収録のEP「Seasons」の秋担当だけあって哀愁に満ちているが、暖かくもある。

ライブでどんな表現になるかはわからないが、アンニュイなメロディーをどんな表情で歌うかに注目したい。


10 涙のいた場所

初披露:2025/5/4 RAY ONE-MAN SHOW「Preserved Flowers」

今までRAYの代表曲を送り出してきたハタユウスケによる、美メロ、轟音ギター、いわばRAYの王道的な曲で、ということは当然良い曲。それでいて、これまでのハタ曲の積み重ねも感じられる。

この曲のライブといえば、なんといっても初披露のワンマン。このワンマンでRAYを卒業する愛海さんへの餞として作られた曲であり、初披露の編成は最初で最後だった。

あのライブの延長線上にあり、同時に今のRAYを表しているこの音源が形になっていることを嬉しく思う。


11 夜来香迴旋

初披露:2024/9/21 RAY現体制2周年記念ワンマンライブ「Perennial」

花の名前にまつわるタイトルに違わぬたおやかさを湛えたバラード。重厚なギターの上で何度も繰り返される「夜来香」のコーラスが、記憶にあるような幻のような情景へと誘う。

ライブでの振り付けの美しさが素晴らしく、RAYのダンスが激しくない曲でも魅せられることを示してくれる1曲。個人的な印象ではバンドセットが印象深い。ギターがガツンと鳴るほど、漂うようなボーカルの蠱惑的な魅力も増幅される。


12 天体

ライブ未披露

前曲の轟音アウトロからこの曲のイントロアルペジオは反則!

淡々としているがゆえに個性が引き立つボーカルも素晴らしい、RAYの新境地だと思う。浮遊感を表現するサウンドが天才的。

おそらく対バンでしょっちゅうセトリ入りするタイプの曲ではないが、きっと披露されたときの破壊力はすごい。ダンスというより演劇的な動きで見てみたいかも。既存曲だと逆光、しづかの海に近い形を想像している。

おとぎで始まったアルバムが天体で終わる構成も美しい。本のページを開いて物語が始まり、物語の中に溶け込んで終わるようなイメージを持っている。


2025年8月27日水曜日

内山フェスと壁

 ライブハウスの壁を見るのが好きだ。

好きなバンドが、今度知らないバンドの主催ライブに出る。今では人気のアイドルの、昔の新譜告知ポスターにサインが入っている。今日見に来たアーティストが、数年前の日付でサインしている。

現代の音楽には人一人では到底全貌を知ることはできない歴史の積み重ねがあり、しかし少し掘り下げてみると時に自分の知っている音楽の世界と重なることがある。ライブハウスの壁は、そんな感覚を抱かせてくれる。

内山フェスは、こういう感覚にワクワクする自分を満たしてくれるイベントだ。


内山フェスこと「tie in reaction」は、アイドルグループ・RAYのメンバーで音楽通としても知られる内山結愛が主催する対バンイベントだ。

2025年に入ってからは毎月開催されており、2026年1月には3会場周遊フェスとしての開催が決まっている。


直近で私が参加したvol.11(2025/8/22開催)では、TØGARÜ、Trooper Saluteの2組がゲストだった。

1組目、幕が上がる前からDJに合わせてドラムを叩き期待を高めてくれたのはバンド体制になって3回目というTØGARÜ。激しく情熱的ながら、美しくて緩急がある。8曲からなるボリュームあるセトリながら最後には「もう終わってしまうのか」と惜しくなった。そして演奏する姿のカッコよさたるや。最後にギターを高く掲げたとき、会場のテンションは最高潮だった。

Trooper Saluteは幕が上がると同時にあみん「待つわ」のコーラスが始まり、「冷たいマーメイド」につながる度肝を抜かれるスタート。日本のポップスの歴史に触れてきた者なら誰しも耳に馴染むメロディが、一癖も二癖もあるサウンドの中では何通りもの表情を見せる。この日に向けて音源で聞いてきた曲も、ライブだとより楽しい、なんてもんじゃない。リズムはよりスリリングだし、ボーカルの圧倒的な存在感から目が離せない。

そしてRAYは久しぶりの披露となる「レジグナチオン」に始まり、曲によって様々なサウンドの中でも共通して美しいメロディが流れ続けるセトリで前2組が盛り上げたフロアを彩った。


この回は歴代内山フェスの中でも特に素晴らしかった。しかし同時に、このイベントらしい良さが出た回でもあったと思う。

この内山フェス、イベント名に名前を冠しているのは伊達ではなく、制作の大部分を内山さんが行っている。もともと多忙なRAYの活動と同時に血反吐を吐きながら(本人談)作られているだけあり、内山さんの音楽愛と伝道師としての取り組みが存分に現れている。

まず目を引くのは絶妙なブッキングだ。どの回でも今見る価値のあるアーティストを、注目度の高い若手から「ここを呼ぶか」と驚くベテランまで自由に呼んでいる。

2025年開催のvol.4以降では、毎月テーマを決めて制作されている。最初は「シューゲイズ」「エモ」といった一般的な音楽ジャンルがテーマになっていたが、現在ではそれにとどまらず、これがまた面白い。

vol.11のテーマは「令和的ノスタルジー」である。ゲスト2組、そしてRAYも含めてやっている音楽ジャンルを言葉で表現したら(それも難しい人たちだけど)おそらくあまり使われる言葉は被らないけれど、ライブで体感する喜びはどこか共通点がある。

ジャンル横断的なアイドル音楽の世界にいるRAYという環境ゆえに、このブッキングが可能になっているのかもしれない。

RAYのセトリも毎回内山さんが決めている。RAYの豊かな楽曲群の中から、いかにテーマを表現するか、普段の対バンとは異なる角度で決まるセトリも見応えがある。

こう書いていると音楽通向けのイベントなのかな?と思われるかもしれない。RAYは音楽に詳しいファンも多いし、出演バンド発表に盛り上がってる人がいる中で知らない自分は十分に楽しめないかも…と思うのは無理からぬことだ。でも実際そんなことはなくて、個人的な感触としては、むしろ入口になれるイベントだと思っている。

出演バンドの紹介やおすすめ音源が事前にTwitterで告知されるから、知らないバンドでも軽い予習をしやすい。入場特典として毎回内山さん手製のZINEが配布され、テーマに合わせたおすすめのアルバムが紹介されている。また、vol.9からは開演前に内山さん自身によるDJが行われるようになった。毎回見に行ってDJプレイの上達っぷりを見るのも楽しい(この手作り感、上達を見守る楽しみは非常にアイドル現場的なイベントともいえるかもしれない)。

以上のように、近しい魅力を持つ音楽に出会う導線をたくさん用意してくれている。私自身、「令和的ノスタルジー」が好きなのかも…と思い始めている。

もちろん、ただRAYや出演バンドが好きで参加して、その回のライブを楽しむだけでも問題ない。あくまでそうすることもできる、というだけである。


すでに告知されているvol.12, 13の出演者は個人的に好きなバンドが多く楽しみだ。ただそれはライブだけでなく、DJやZINEのラインナップ、あるいはポップコーンのフレーバーに至るまで、どんなイベントになるのだろうと想像するところも含めての期待が胸を埋め尽くしている。

2025年5月8日木曜日

旅の終わりに寄せて

アイドルは時に、活動拠点から離れた土地でライブを開催する。そしてオタクである私は、アイドルを追いかけて遠方のライブに参加することがある。

頻繁にではない。交通費や時には宿代もかかるし、移動に時間もかかる。私は東京都在住であるため、大抵の場合魅力的なライブがどこかしら近くでやっている。しかしいろいろな意味で見逃せないライブが遠方であったりすることがあり、そうなると交通手段を調べ始めることになる。

こうやって旅するときには、そこそこは観光したい。ライブのためだけに新幹線や飛行機に乗るストイックなオタクもいるが、私はそこまでするのはしんどいと思ってしまう。最近ではライブにかこつけて旅行するくらいのテンションで参加することが多い。

遠方に行く以上それなりの荷物は必要だが、バッグは極力小さくする。ライブ会場に大きな荷物を抱えて入りたくはない。そして毎回、帰りにはバッグがパンパンになっている。想定より大きいお土産を買うことも原因だが、博物館や自然公園でもらったパンフレットなんかも地味にかさばる。

そういうところも含めて、旅は予想外が多くて疲れる。もっと計画性があれば体力に余裕を残して旅程をこなすこともできるのだろう。だが私は偶発的な発見も含めた旅をしたいと思っている。だからこれは楽しみ方とトレードオフの疲れだ。

持ち帰ったもののうち紙類などは、整理もしないまま「何を入れてもいい箱」に入れている。ごちゃついているが、箱の雑多な雰囲気を好ましく思う。


5/4に開催されたRAY ONE-MAN SHOW「Preserved Flowers」に参加した。

このライブは、メンバーの愛海さんのラストライブであり、6周年記念であり、BELLRING少女ハートとのスプリットツアー「NO MY WAY」のファイナルでもある。

前半はここ一か月の3人編成のショーケース的な、オルタナティヴアイドルの幅を示してくれるライブ。洗練されていながら、爆発的な熱もある(このへんは共にツアーを回ったベルハーの影響も見える)。音楽的な良さはRAYの最先端といっていいもので、特に「See ya!」は圧巻だった。

4人になった後半は、明るい曲中心の、見る者を幸せにしてくれるような王道(RAYなりの「王道」というより、「RAYの中の王道」のニュアンス)セトリ。「アップサイドダウン」「Fading Lights」の儚さをまとった美しさは初めてRAYを見たときを思い出した。

そして終盤で披露された新曲はハタ節全開のシューゲイズナンバー。既存曲だと「わたし夜に泳ぐの」に近いイメージのドラマティックなメロディと、決然としたボーカルが合わさってRAYの未来を感じさせてくれた。

そしてラスト「フロンティア」で、あの場でできる限りの5人体制RAYが顕現していた。RAYが好きな気持ちを、最後に今一度思い出させてくれた。

ワンマンをツアーファイナルとして見ると、ここに至るまでの道のりは想定とは異なるものだったと思う。私が参加したのは東京、埼玉の他は2マンラストの名古屋だけだったが、2組の様子を見る機会は多くあった(RAYはもちろんベルハーも対バンで度々見た)。ファン目線でも複雑な気持ちがある。出演メンバーは不足を感じさせないパフォーマンスをしてくれた。他のファンの雰囲気で、不在のメンバー、卒業するメンバーが愛されていることがわかったことは嬉しかったけど、寂しさが消えるわけではなかった。

メンバーは我々ファンには疲れた姿など微塵も見せなかったが、何の苦労もないなんてことはなかっただろう。存分に楽しんだとはいえ、何のてらいもなく全てが良かった!と言いづらい気持ちもある。

それでも、いつもらったかも忘れたようなものが詰まった雑多な箱を愛しているように、ここまでそれぞれが間違いなく頑張ってたどってきた道のりは、どうしようもなく愛しい。自分もまた、再びどこかに出かけたくなった。

そしてRAYはこのワンマンから1週間も経たないうちに、今度は台湾へと旅立つという。予想のつかないこともあることでしょうが、良い旅を。



2025年1月11日土曜日

RAY ONE-MAN SHOW 「全部、花 花と唄い、死ぬ」(12/30 渋谷WWW)

 タイトルからして穏やかではない、2024年の末に開催されたRAYのワンマンです。

入場したらまずステージ縁に敷き詰められた花が目につき、その奥にはメンバー人数分のシンバルと、それに乗ったメンバーに対応する花。モニターには赤い影のついた題字。異様な雰囲気がパンパンのWWWを包んでいました。

そんな中始まった1曲目はサイン。エレクトロでダンサブルなこの曲、VJ、ダンスとの相性も抜群で今回のライブは視覚でも楽しませるという意思表示。もうここから待ち受ける音の饗宴への期待はさらに高まりました。

そして鳴り止まないアウトロの中で、徐々にリズムが変化しメロディが混じり始め、内山さんの「Love Song」が聞こえたとき、今日は音楽が止まらないライブになる、その予感に震えたのを覚えています。

3曲目の尊しあなたのすべてを、過剰な鮮やかさが内包する不穏さ、メロディーの美しさと重たいサウンドが花で埋め尽くされたステージとの相乗効果で何倍にもなって打ち込まれます。

TESTではうってかわって無機質な印象のダンス。愛海さんがバチバチに決まってました。17で引き続き温度低めながらも光が見え始め、続く星座の夜空で一気に光が溢れます。照明・VJも相まってここの解放感はすごかった…。

大喝采のフロアに、さらに新曲starburstが追い打ちをかけてきます。イントロの振りのかわいさ、コットまおコンビのラップの楽しさ。新曲ながらフロアもノリノリで多幸感でいっぱいになりました。

この盛り上がりに続いたのは逆光。「光」を共通項として持ちながらここまでとはっきり変わるサウンド、この移り変わりができるのはRAYならでは。そしてシームレスにネモフィラ、夜来香迴旋と重厚なノイズに包まれていきます。

花にまつわる曲からの満を持してBloom、そしてフロンティア、See ya!はこのライブで最もアクティブで高揚感のあるパートでした。

Bloomでどちらかというと淡々と刻まれるビートがフロンティアではっきりと前面に現れ、See ya!でダンスと有機的に結びついていき爆発する流れ(紬実詩さんが神がかっていた)はアイドルRAYの真骨頂ともいえる至高の時間でした。

演者がはけてここで終わりか…?と訝しんだところに一節の語りが響きました。


「秋の花が好きな人は、秋に死ぬんだって」


巡る季節、そして花と死。否が応でもこのライブのキーワードを思い出してしまいます。朗読が続く中で、音楽は続いていることに気づきます。繰り返しの中でグルーヴが生まれ始め、時にノイズが混じるそれはまぎれもなくRAYの音楽でした。

一種のトランス状態になった会場で再び幕を開けた最後の曲はしづかの海、低めのBPMとギターの響きはこのライブで最も死のイメージに近いものです。フロア全体で盛り上がっていた先刻とは異なり、自分以外にRAYだけしか感じられないような引力で、でも葬式のようなしめやかな終わりではなく、終わりに向かう中でひときわ激しく、美しく生命の燃えるような輝きがありました。

シンバルを叩く姿が淡々としていたり猛烈であったり、花もボロボロと崩れるものもあれば一度の衝撃でぱっと散るものもあり。偶発的なものも含めてメンバーの個性が出るところにはアイドルらしい表現と感じつつ、その中で極限まで研ぎ澄まされたものを見せてくれるのはRAYの特異性であり、目が離せないところでもあります。


ここからはファンというよりひとりの物語を愛好する人間としての感想になりますが、はっきりしたコンセプトを、ライブという形式の中で、テキストによらず物語っていたことがとんでもないなと感じています。

人は言葉を聞けばそっちに引っ張られてしまう生き物で、なので歌詞の印象もこういう場面では特に強く出るものだと私は思っています。ですが今回(RAYのライブではしばしばあるように)場面によってはボーカルが聞こえにくくなるほどの轟音もあり、その分オケのサウンド、そして何よりパーカッションのビートに比重が寄っていて、その上で生と死を巡るコンセプトを感じられる作りになっている衝撃。

VJと花のビジュアル、ダンス、(ボーカルも含む)サウンドがまずそこにあり、それを体で感じて時にメンバーと共に踊る中で、圧倒的な生とその結末としての死を体感する。

これだけの体験をさせてくれたチームRAYには改めて敬服の念を抱かざるを得ません。この先も素晴らしいものを作ってくれるだろうと期待しつつ、でもこのライブは歴史の中で唯一無二であり続けるだろうとも思っています。

2024年9月5日木曜日

きのホ。 AJIHEN ツアーファイナル東京公演(8/24/2024 duo MUSIC EXCHANGE)

 新アルバム都スカイハイがあまりにも良くて興味が膨らんできたところにアコースティック&バンドセットのライブがあると知ってこれは行かないわけにはいかないと参加を決定しました。そんな感じなので、あのフロアの中では最もきのホ。のライブを知らない部類の人間だったと思います。

昼の部

アコースティックといいつつも幅広いアレンジが楽しめるライブでした。

桃源京、馬鹿と煙で曲をじっくり味わい、落ち着いて見ることになると思いきやMC明けの相合傘はまさかのサンバ!一転してずっと体揺らして楽しんでました。渋滞も衝撃的。まず小清水さんのラップに度肝を抜かれ、バンドメンバー紹介、ソロ演奏と一曲の中でこんなに楽しんでいいのかと盛りだくさん。かと思えば爛漫、晴天ではこちらの心の奥深くを刺激してくるような情感たっぷりのパフォーマンス。

そして圧巻だったのは夕立雲。魂のこもったMCを終えた小花衣こはるさんがギターをかき鳴らして歌う姿にまず引き込まれ、そしてそれに呼応するようにメンバーにもバンドにも広がっていって会場全体が幸せな空間でした。

今回の編成で実感したのがメンバーのエンターテイナーっぷり。そもそもこんなツアーを企画する時点でファンを音楽で楽しませようというチャレンジ精神たっぷりです。その上で楽器演奏やパフォーマンスにそれぞれの個性が際立っていて、なのにというよりだからこそ全体で見て良い形になっているように感じました。


夜の部

先にバンドが登場し、メンバーがひとりひとり高らかに紹介されていくところでまずテンションが上がる。そして最後に呼ばれた御堂莉くるみさんのパワフルなボーカルから始まるクラベチャウ!オープニングから心を鷲掴みにされました。

そして麗しのタンバリン、TEAとアルバムの熱量強めの曲でたたみかけられ(バンドサウンドが超似合う!)、その後のMCで息を整えている時点で最高のライブになると確信しました。

この流れの中のグッドサインのフロアみんなでサムズアップ→反面教師の流れは最高潮の盛り上がり、初披露の都スカイハイでは空気が一変しました。夏も後半となったこの季節にぴったり、扇子も相まって切なさと鮮やかさを演出してくれました。

相合傘、夕立雲はまさにツアータイトルの「AJIHEN」の楽しみがあり、モーニンググローリーのMCで予習した奇妙なコールも楽しい。

さてここまでアルバム曲中心で今のきのホ。の魅力を最大限に見せてくれて、アルバムを聞いて来た私にとっては期待通りのライブで非常に楽しかったです。

その印象をさらに覆してくれたのが御守ミコさんのMC、そして続くきのみきのままでした。MCを経たきのみきのままの歌詞が決意表明のように聞こえてきて、変わらない根っこを持ちながら変化していくきのホ。のこの先が見たいと強く思わせてくれました。


昼夜通してライブのクオリティが素晴らしかったわけですが、それだけではなくてファンがきのホ。を愛している理由に納得する、そんなライブでした。これからどんなグループになっていくのか本当に楽しみです。

2024年8月20日火曜日

fishbowl 鉢の日(8/8/2024 渋谷WWW・8/12/2024 浜松窓枠)

恒例となったfishbowlの8月ワンマン。先日のTIFの反響もあってか渋谷・浜松どっちも満員の会場でアンコール込みで18曲、たっぷり楽しみました。

さてこの夏のfishbowl、いつからかライブの楽しさが格段に上がった印象があります。どの曲でもひとつひとつのパフォーマンスに見どころがあり、生のこの瞬間を楽しめるライブとしてのパワーが段違いになってました。


まずセトリ(齋藤ザーラチャヒヨニさん考案!)が熱い。

定評のある繋ぎはもちろん(個人的に好きなのは深みに沈み込むような尻尾→九天と完食→六感のシームレス)、猛獣平均踊子の流れがハッピーなオーラに溢れてて楽しい。熱波で最大限盛り上げてからの一雨は、クールダウンというより熱気のうねりを新たなグルーヴに昇華するような体験。

本編ラストに半分、アンコール初っ端に開幕を持ってくるあたりの貪欲さもすごい。そしてアンコールではハチャメチャに熱く魅せてくれる。メンバーの好きな色新衣装はこれまでとガラッと印象が変わります。真っ白な衣装でプリンセスな佐佐木一心さんが力強く拳を掲げるギャップがたまらない。

そしてちょこっとLOVEカバー。言わずとしれた平成の名曲でもちろん楽しいんですが(ステージ上のわちゃわちゃ感!)セトリの中で溶け込んでもいて、今後も要所要所でカバーしてくれたら嬉しいと思ってます。

新体制になってからの成長を感じさせてくれるライブでもありました。一曲目の朱夏は三島の初ライブでも最初に披露された曲で、当時はまだ硬い印象もあったのが今では余裕たっぷり。新体制初期の新曲だった一雨、四季も表現は研ぎ澄まされてフロアの盛り上がりも大違い、半年も経っていないのに感慨深い…。

そして最高のライブとともに今後への期待もしっかり高めてくれました。アンコール準備中にアルバムのダイジェストが流れ(±零 yaya plusがまたも名曲の予感!)、そして浜松のラストMCでは年末の三島でのホールワンマンが発表されました。新体制お披露目イベントは浜松の翌日に三島でしたが、今度は浜松の4ヶ月後の三島。ここまでの変化を考えると、12月の彼女たちはどうなっているのか想像もつかず、それゆえに今からワクワクしています。

2024年6月2日日曜日

タイトル未定 ワンマンライブ東京 TETRAPOD(5/20/2024 Zepp DiverCity)

 1年ぶりの東京ワンマン、2022年のTIFメインステージ争奪戦で立ったZepp DiverCityへの凱旋、現在の体制ラストライブといういろんな意味でメモリアルとなる公演。

私は川本空さんのデビューした頃を知らず、前回のワンマンも2022年のTIFも見ていません。昔から応援していた方々と同じようには感じられなかったでしょう。それでも自分なりの感じ方があり、大切なものを受け取ったことをここに残しておこうと思います。


「春霞」とともにOP映像、そしてメンバーの登場。最初は幕が掛かったままのパフォーマンスでした。少し音響トラブルがあったものの、そこはタイトル未定、歌唱の力強さに引き込まれます。印象に残ったのは、2曲目黎明で冨樫優花さんの「何者にでもなれる」という一言の語り。

幕が下りて、桜味、夏のオレンジとシリアスな前2曲とうってかわって幸福感あふれる2曲。現れた4人の笑顔が印象的です。この落差はバランスを取っているというよりは「全部の感情を届ける」貪欲さを感じます。

冨樫川本の「春霞」。ゆるい雰囲気で登場しましたが、曲も相まって冨樫優花さんが涙してしまうところもあり、ハーモニーにもふたりで声を重ねてきた時間を感じてこちらももらい泣きしそうに。

そして薄明光線。曲中の語りが印象的な曲。空さんの「私って、みんなにとって特別な存在だよね」のアドリブも含め、いつも以上にずしんと響いてきました。

しんみりした空気になりつつあったところでMC、次の曲が新曲壊せと発表。タオルの回し方とシンガロングの練習で期待が高まります。曲が始まると初っ端の阿部葉菜さんの声がいきなり力強く、すぐボルテージは最高潮に。最高に気持ち良い空間でした。

今度は谷阿部でガンバレワタシ。こちらは気安さの中にも暖かみのある、幸せの伝わってくる歌声。

続く「溺れる」は一番の衝撃だったかもしれません。何せAメロの阿部葉菜さん、谷乃愛さんが直前とは似ても似つかない硬質な声で、これはいつもと違うという空気でした。どんどん気迫が増して、ボーカルは慟哭にも似た響きになり、怪演といっていいほどでした。

そしてその後に「僕ら」が来るのだからたまらない。このパートは間違いなくこの日のハイライトでしょう。

MCでこのライブへの思いを語って次の曲へ……というところで、準備が長引いたのか暗転が長く続いて結局MC延長戦に。

偶然で生まれたこのパートのおかげで、次の「にたものどうし」はより沁みたような気がします。この4人でいる時間をいつくしむような歌い方と歌詞のシンクロは、このときのために作られた曲のようにも思えました。

そこからは怒涛のクライマックス。タイトル未定といえばな青春群像、鼓動。そして新たな代表曲ともいえる群青。最高の熱とともに、いったん本編は終了。


鳴りやまないアンコールの声に答えて登場したのはアコースティックバンド編成。ヴァイオリンも入った「踏切」「蜃気楼」の美しさに聞き惚れます。

そして最後の曲、灯火。軽妙で心地よいリズムと、深い愛の込められた歌詞。寂しさとともに、ここに来てよかったという思いがじんわりと浮かんでくる、そんな時間でした。


このライブが特別なものになった理由に、ここでのタイトル未定が楽曲を自分たちに引き付けて、自分ごととして歌っていることがあるように思います。

タイトル未定の楽曲で歌われる内容は、多くが普遍的なものです。でもこのワンマンでは特に、今の自分たちの歌として、それゆえ時に音源とは大きく形を変えて歌われていたのが印象的でした。

栞の「私たちとの思い出を、心の栞にしてください」という語り。

鼓動の何にだってなれ「た」からのアドリブ。

最後の曲の前で、川本空さんは「悩んだとき、いつでも過去を振り返ってください」と語りました。言葉だけ見ると後ろ向きに聞こえるかもしれないこの言葉は、今までのアイドル人生、そしてこの瞬間までが素敵なものであったことを共有してくれているものです。

振り返ってみると、このライブで空さんは、タイトル未定はずっとこのことを伝え続けていてくれたように思えます。

音源とライブの距離感からRAY『White』を語る

  1 おとぎ 初披露:2024/9/21 RAY現体制2周年記念ワンマンライブ「Perennial」 この最上級の美しさのイントロからアルバムがスタートするのがたまらない。語りかけるようだったボーカルが激情を帯び、轟音アウトロへと流れ込む芸術的な展開。 ライブでも、それまでの流...