タイトル未定 ワンマンライブ東京 TETRAPOD(5/20/2024 Zepp DiverCity)

 1年ぶりの東京ワンマン、2022年のTIFメインステージ争奪戦で立ったZepp DiverCityへの凱旋、現在の体制ラストライブといういろんな意味でメモリアルとなる公演。

私は川本空さんのデビューした頃を知らず、前回のワンマンも2022年のTIFも見ていません。昔から応援していた方々と同じようには感じられなかったでしょう。それでも自分なりの感じ方があり、大切なものを受け取ったことをここに残しておこうと思います。


「春霞」とともにOP映像、そしてメンバーの登場。最初は幕が掛かったままのパフォーマンスでした。少し音響トラブルがあったものの、そこはタイトル未定、歌唱の力強さに引き込まれます。印象に残ったのは、2曲目黎明で冨樫優花さんの「何者にでもなれる」という一言の語り。

幕が下りて、桜味、夏のオレンジとシリアスな前2曲とうってかわって幸福感あふれる2曲。現れた4人の笑顔が印象的です。この落差はバランスを取っているというよりは「全部の感情を届ける」貪欲さを感じます。

冨樫川本の「春霞」。ゆるい雰囲気で登場しましたが、曲も相まって冨樫優花さんが涙してしまうところもあり、ハーモニーにもふたりで声を重ねてきた時間を感じてこちらももらい泣きしそうに。

そして薄明光線。曲中の語りが印象的な曲。空さんの「私って、みんなにとって特別な存在だよね」のアドリブも含め、いつも以上にずしんと響いてきました。

しんみりした空気になりつつあったところでMC、次の曲が新曲壊せと発表。タオルの回し方とシンガロングの練習で期待が高まります。曲が始まると初っ端の阿部葉菜さんの声がいきなり力強く、すぐボルテージは最高潮に。最高に気持ち良い空間でした。

今度は谷阿部でガンバレワタシ。こちらは気安さの中にも暖かみのある、幸せの伝わってくる歌声。

続く「溺れる」は一番の衝撃だったかもしれません。何せAメロの阿部葉菜さん、谷乃愛さんが直前とは似ても似つかない硬質な声で、これはいつもと違うという空気でした。どんどん気迫が増して、ボーカルは慟哭にも似た響きになり、怪演といっていいほどでした。

そしてその後に「僕ら」が来るのだからたまらない。このパートは間違いなくこの日のハイライトでしょう。

MCでこのライブへの思いを語って次の曲へ……というところで、準備が長引いたのか暗転が長く続いて結局MC延長戦に。

偶然で生まれたこのパートのおかげで、次の「にたものどうし」はより沁みたような気がします。この4人でいる時間をいつくしむような歌い方と歌詞のシンクロは、このときのために作られた曲のようにも思えました。

そこからは怒涛のクライマックス。タイトル未定といえばな青春群像、鼓動。そして新たな代表曲ともいえる群青。最高の熱とともに、いったん本編は終了。


鳴りやまないアンコールの声に答えて登場したのはアコースティックバンド編成。ヴァイオリンも入った「踏切」「蜃気楼」の美しさに聞き惚れます。

そして最後の曲、灯火。軽妙で心地よいリズムと、深い愛の込められた歌詞。寂しさとともに、ここに来てよかったという思いがじんわりと浮かんでくる、そんな時間でした。


このライブが特別なものになった理由に、ここでのタイトル未定が楽曲を自分たちに引き付けて、自分ごととして歌っていることがあるように思います。

タイトル未定の楽曲で歌われる内容は、多くが普遍的なものです。でもこのワンマンでは特に、今の自分たちの歌として、それゆえ時に音源とは大きく形を変えて歌われていたのが印象的でした。

栞の「私たちとの思い出を、心の栞にしてください」という語り。

鼓動の何にだってなれ「た」からのアドリブ。

最後の曲の前で、川本空さんは「悩んだとき、いつでも過去を振り返ってください」と語りました。言葉だけ見ると後ろ向きに聞こえるかもしれないこの言葉は、今までのアイドル人生、そしてこの瞬間までが素敵なものであったことを共有してくれているものです。

振り返ってみると、このライブで空さんは、タイトル未定はずっとこのことを伝え続けていてくれたように思えます。

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