投稿

旅の終わりに寄せて

イメージ
アイドルは時に、活動拠点から離れた土地でライブを開催する。そしてオタクである私は、アイドルを追いかけて遠方のライブに参加することがある。 頻繁にではない。交通費や時には宿代もかかるし、移動に時間もかかる。私は東京都在住であるため、大抵の場合魅力的なライブがどこかしら近くでやっている。しかしいろいろな意味で見逃せないライブが遠方であったりすることがあり、そうなると交通手段を調べ始めることになる。 こうやって旅するときには、そこそこは観光したい。ライブのためだけに新幹線や飛行機に乗るストイックなオタクもいるが、私はそこまでするのはしんどいと思ってしまう。最近ではライブにかこつけて旅行するくらいのテンションで参加することが多い。 遠方に行く以上それなりの荷物は必要だが、バッグは極力小さくする。ライブ会場に大きな荷物を抱えて入りたくはない。そして毎回、帰りにはバッグがパンパンになっている。想定より大きいお土産を買うことも原因だが、博物館や自然公園でもらったパンフレットなんかも地味にかさばる。 そういうところも含めて、旅は予想外が多くて疲れる。もっと計画性があれば体力に余裕を残して旅程をこなすこともできるのだろう。だが私は偶発的な発見も含めた旅をしたいと思っている。だからこれは楽しみ方とトレードオフの疲れだ。 持ち帰ったもののうち紙類などは、整理もしないまま「何を入れてもいい箱」に入れている。ごちゃついているが、箱の雑多な雰囲気を好ましく思う。 5/4に開催されたRAY ONE-MAN SHOW「Preserved Flowers」に参加した。 このライブは、メンバーの愛海さんのラストライブであり、6周年記念であり、BELLRING少女ハートとのスプリットツアー「NO MY WAY」のファイナルでもある。 前半はここ一か月の3人編成のショーケース的な、オルタナティヴアイドルの幅を示してくれるライブ。洗練されていながら、爆発的な熱もある(このへんは共にツアーを回ったベルハーの影響も見える)。音楽的な良さはRAYの最先端といっていいもので、特に「See ya!」は圧巻だった。 4人になった後半は、明るい曲中心の、見る者を幸せにしてくれるような王道(RAYなりの「王道」というより、「RAYの中の王道」のニュアンス)セトリ。「アップサイドダウン」「Fading Lights」の儚さを...

RAY ONE-MAN SHOW 「全部、花 花と唄い、死ぬ」(12/30 渋谷WWW)

  タイトルからして穏やかではない、2024年の末に開催されたRAYのワンマンです。 入場したらまずステージ縁に敷き詰められた花が目につき、その奥にはメンバー人数分のシンバルと、それに乗ったメンバーに対応する花。モニターには赤い影のついた題字。異様な雰囲気がパンパンのWWWを包んでいました。 そんな中始まった1曲目はサイン。エレクトロでダンサブルなこの曲、VJ、ダンスとの相性も抜群で今回のライブは視覚でも楽しませるという意思表示。もうここから待ち受ける音の饗宴への期待はさらに高まりました。 そして鳴り止まないアウトロの中で、徐々にリズムが変化しメロディが混じり始め、内山さんの「Love Song」が聞こえたとき、今日は音楽が止まらないライブになる、その予感に震えたのを覚えています。 3曲目の尊しあなたのすべてを、過剰な鮮やかさが内包する不穏さ、メロディーの美しさと重たいサウンドが花で埋め尽くされたステージとの相乗効果で何倍にもなって打ち込まれます。 TESTではうってかわって無機質な印象のダンス。愛海さんがバチバチに決まってました。17で引き続き温度低めながらも光が見え始め、続く星座の夜空で一気に光が溢れます。照明・VJも相まってここの解放感はすごかった…。 大喝采のフロアに、さらに新曲starburstが追い打ちをかけてきます。イントロの振りのかわいさ、コットまおコンビのラップの楽しさ。新曲ながらフロアもノリノリで多幸感でいっぱいになりました。 この盛り上がりに続いたのは逆光。「光」を共通項として持ちながらここまでとはっきり変わるサウンド、この移り変わりができるのはRAYならでは。そしてシームレスにネモフィラ、夜来香迴旋と重厚なノイズに包まれていきます。 花にまつわる曲からの満を持してBloom、そしてフロンティア、See ya!はこのライブで最もアクティブで高揚感のあるパートでした。 Bloomでどちらかというと淡々と刻まれるビートがフロンティアではっきりと前面に現れ、See ya!でダンスと有機的に結びついていき爆発する流れ(紬実詩さんが神がかっていた)はアイドルRAYの真骨頂ともいえる至高の時間でした。 演者がはけてここで終わりか…?と訝しんだところに一節の語りが響きました。 「秋の花が好きな人は、秋に死ぬんだって」 巡る季節、そして花と死。否が応で...

きのホ。 AJIHEN ツアーファイナル東京公演(8/24/2024 duo MUSIC EXCHANGE)

 新アルバム都スカイハイがあまりにも良くて興味が膨らんできたところにアコースティック&バンドセットのライブがあると知ってこれは行かないわけにはいかないと参加を決定しました。そんな感じなので、あのフロアの中では最もきのホ。のライブを知らない部類の人間だったと思います。 昼の部 アコースティックといいつつも幅広いアレンジが楽しめるライブでした。 桃源京、馬鹿と煙で曲をじっくり味わい、落ち着いて見ることになると思いきやMC明けの相合傘はまさかのサンバ!一転してずっと体揺らして楽しんでました。渋滞も衝撃的。まず小清水さんのラップに度肝を抜かれ、バンドメンバー紹介、ソロ演奏と一曲の中でこんなに楽しんでいいのかと盛りだくさん。かと思えば爛漫、晴天ではこちらの心の奥深くを刺激してくるような情感たっぷりのパフォーマンス。 そして圧巻だったのは夕立雲。魂のこもったMCを終えた小花衣こはるさんがギターをかき鳴らして歌う姿にまず引き込まれ、そしてそれに呼応するようにメンバーにもバンドにも広がっていって会場全体が幸せな空間でした。 今回の編成で実感したのがメンバーのエンターテイナーっぷり。そもそもこんなツアーを企画する時点でファンを音楽で楽しませようというチャレンジ精神たっぷりです。その上で楽器演奏やパフォーマンスにそれぞれの個性が際立っていて、なのにというよりだからこそ全体で見て良い形になっているように感じました。 夜の部 先にバンドが登場し、メンバーがひとりひとり高らかに紹介されていくところでまずテンションが上がる。そして最後に呼ばれた御堂莉くるみさんのパワフルなボーカルから始まるクラベチャウ!オープニングから心を鷲掴みにされました。 そして麗しのタンバリン、TEAとアルバムの熱量強めの曲でたたみかけられ(バンドサウンドが超似合う!)、その後のMCで息を整えている時点で最高のライブになると確信しました。 この流れの中のグッドサインのフロアみんなでサムズアップ→反面教師の流れは最高潮の盛り上がり、初披露の都スカイハイでは空気が一変しました。夏も後半となったこの季節にぴったり、扇子も相まって切なさと鮮やかさを演出してくれました。 相合傘、夕立雲はまさにツアータイトルの「AJIHEN」の楽しみがあり、モーニンググローリーのMCで予習した奇妙なコールも楽しい。 さてここまでアルバム曲中...

fishbowl 鉢の日(8/8/2024 渋谷WWW・8/12/2024 浜松窓枠)

恒例となったfishbowlの8月ワンマン。先日のTIFの反響もあってか渋谷・浜松どっちも満員の会場でアンコール込みで18曲、たっぷり楽しみました。 さてこの夏のfishbowl、いつからかライブの楽しさが格段に上がった印象があります。どの曲でもひとつひとつのパフォーマンスに見どころがあり、生のこの瞬間を楽しめるライブとしてのパワーが段違いになってました。 ➤2024.8.12 #fishbowl SETLIST ➤ワンマンライブ 鉢の日 ➤浜松窓枠 1.朱夏 2.猛獣 3.平均 4.踊子 5.尻尾 6.九天 7.深海 8.茶切 cute side 9.完食 10.六感 11.八月 12.熱波 13.一雨 14.半分 EN1.開幕 EN2.二兎 EN3.ちょこっとLOVE EN4.四季 鉢の日、本日も超満員でした!!… https://t.co/CroQnpK7sS pic.twitter.com/xhCtn9xQTj — fishbowl (@fishbowl2021) August 12, 2024 まずセトリ(齋藤ザーラチャヒヨニさん考案!)が熱い。 定評のある繋ぎはもちろん(個人的に好きなのは深みに沈み込むような尻尾→九天と完食→六感のシームレス)、猛獣平均踊子の流れがハッピーなオーラに溢れてて楽しい。 熱波で最大限盛り上げてからの一雨は、クールダウンというより熱気のうねりを新たなグルーヴに昇華するような体験。 本編ラストに半分、アンコール初っ端に開幕を持ってくるあたりの貪欲さもすごい。そしてアンコールではハチャメチャに熱く魅せてくれる。メンバーの好きな色新衣装はこれまでとガラッと印象が変わります。真っ白な衣装でプリンセスな佐佐木一心さんが力強く拳を掲げるギャップがたまらない。 そしてちょこっとLOVEカバー。言わずとしれた平成の名曲でもちろん楽しいんですが(ステージ上のわちゃわちゃ感!)セトリの中で溶け込んでもいて、今後も要所要所でカバーしてくれたら嬉しいと思ってます。 新体制になってからの成長を感じさせてくれるライブでもありました。 一曲目の朱夏は三島の初ライブでも最初に披露された曲で、当時はまだ硬い印象もあったのが今では余裕たっぷり。新体制初期の新曲だった一雨、四季も表現は研ぎ澄まされてフロアの盛り上がりも大違い、半年も経っていないのに...

タイトル未定 ワンマンライブ東京 TETRAPOD(5/20/2024 Zepp DiverCity)

 1年ぶりの東京ワンマン、2022年のTIFメインステージ争奪戦で立ったZepp DiverCityへの凱旋、現在の体制ラストライブといういろんな意味でメモリアルとなる公演。 私は川本空さんのデビューした頃を知らず、前回のワンマンも2022年のTIFも見ていません。昔から応援していた方々と同じようには感じられなかったでしょう。それでも自分なりの感じ方があり、大切なものを受け取ったことをここに残しておこうと思います。 「春霞」とともにOP映像、そしてメンバーの登場。最初は幕が掛かったままのパフォーマンスでした。少し音響トラブルがあったものの、そこはタイトル未定、歌唱の力強さに引き込まれます。印象に残ったのは、2曲目黎明で冨樫優花さんの「何者にでもなれる」という一言の語り。 幕が下りて、桜味、夏のオレンジとシリアスな前2曲とうってかわって幸福感あふれる2曲。現れた4人の笑顔が印象的です。この落差はバランスを取っているというよりは「全部の感情を届ける」貪欲さを感じます。 冨樫川本の「春霞」。ゆるい雰囲気で登場しましたが、曲も相まって冨樫優花さんが涙してしまうところもあり、ハーモニーにもふたりで声を重ねてきた時間を感じてこちらももらい泣きしそうに。 そして薄明光線。曲中の語りが印象的な曲。空さんの「私って、みんなにとって特別な存在だよね」のアドリブも含め、いつも以上にずしんと響いてきました。 しんみりした空気になりつつあったところでMC、次の曲が新曲壊せと発表。タオルの回し方とシンガロングの練習で期待が高まります。曲が始まると初っ端の阿部葉菜さんの声がいきなり力強く、すぐボルテージは最高潮に。最高に気持ち良い空間でした。 今度は谷阿部でガンバレワタシ。こちらは気安さの中にも暖かみのある、幸せの伝わってくる歌声。 続く「溺れる」は一番の衝撃だったかもしれません。何せAメロの阿部葉菜さん、谷乃愛さんが直前とは似ても似つかない硬質な声で、これはいつもと違うという空気でした。どんどん気迫が増して、ボーカルは慟哭にも似た響きになり、怪演といっていいほどでした。 そしてその後に「僕ら」が来るのだからたまらない。このパートは間違いなくこの日のハイライトでしょう。 MCでこのライブへの思いを語って次の曲へ……というところで、準備が長引いたのか暗転が長く続いて結局MC延長戦に。 偶然...

fishbowl テンセイ 東京(4/10/2024 Veats Shibuya)

fishbowlの新体制ワンマン、東京編です。 ➤2024.4.10 ➤ #fishbowl 新体制初ワンマン「テンセイ 東京」 ➤Veats Shibuya 𐬺𐬺𐬺𝐒𝐄𝐓 𝐋𝐈𝐒𝐓𐬺𐬺𐬺 1.深海 2.猛獣 3.踊子 4.尻尾 5.観察 6.七夕 7.二兎 8.半分 9.熱波 10.平均 11.一雨 EN1.朱夏 EN2.四季 EN3.九天 EN4.夜桜 たくさんの方にお越しいただきまして ありがとうございました🐟🫧… https://t.co/hDZVxVmiHN pic.twitter.com/GKNbiyxBAQ — fishbowl (@fishbowl2021) April 10, 2024 先日の静岡編とほぼ同じ構成。そのぶんパワーアップがはっきりと感じ取れました。3週間でかなりパフォーマンスが洗練されてきてました。おそらくメンバーも余裕が生まれたせいか、ライブ感を楽しんでいる雰囲気がより前に出ていたんじゃないでしょうか。fishbowlはもちろん音源が素晴らしいグループなんですが、ライブでは音源とは違う臨場感を楽しみたいもの。このテンセイ東京編はその点で新体制一で満足度のあるライブでした。 深海、新体制で見るのは2度目なので今回はさらに深く魅力を感じられたように思います。動きと音のハマり方が気持ちいいし、浮力を感じさせる振りも綺麗。楽曲のことば、リズムが感じられてfishbowlらしさのある良い振り付けです。2曲目の猛獣も新しいフォーメーションが楽しい曲。落ちサビでダンサーふたりが獰猛な表情で動き回るのが最高でした。そこから続く観察や尻尾でも生き生きとした表情が見られてGood。 MCでは今回が新体制での東京初ライブという話題に。佐佐木一心さんは普段緊張しないタイプだけど今日は珍しく緊張している。齋藤ザーラチャヒヨニさんはこの東京ライブで初めてfishbowlに加入した実感が湧いたそうな。 そんな新メンバー、パフォーマンス面の実力は静岡でも見せてもらった通りですが、グループとしてのまとまりもどんどん良くなってきていました。たぶんフロアには初めて新体制fishbowlを見る人も多かったはず。そんな中での後半、ライブでは定番の半分や熱波もしっかり盛り上がり、そして新体制を象徴する一雨で本編は締めくくり。先日MVも公開され...

fishbowl テンセイ 静岡(3/20/2024 LIVE ROXY SHIZUOKA)

大盛況だったfishbowlの新体制初ワンマンです。 お披露目が終わったばかりの新体制、開演前から期待が集まっているのを感じました。そしてそれ以上の今のfishbowlを見せてくれたライブでした。 ➤2024.3.20 ➤ #fishbowl 新体制初ワンマン「テンセイ」 ➤LIVE ROXY SHIZUOKA 𐬺𐬺𐬺𝐒𝐄𝐓 𝐋𝐈𝐒𝐓𐬺𐬺𐬺 1.深海 2.猛獣 3.踊子 4.尻尾 5.七夕 6.二兎 7.半分 8.熱波 9.平均 10.一雨 EN1.朱夏 EN2.四季(新曲) EN3.九天 たくさんの方にお越しいただき ありがとうございました🐟🫧… pic.twitter.com/RWXMxOCi1X — fishbowl (@fishbowl2021) March 20, 2024 1曲目はデビュー曲でもある深海。青い衣装がよく似合ってます。木村日音さん作、新振り付けの披露でした。元の透明感あるしなやかさは踏襲しつつ、時に躍動感で魅せる。曲の、ひいては「深海」ということばの持つ解放のイメージがより強調されたようなダンス。新しい面が見えて、でも変わらない魅力もある。確かなセンスを感じる、fishbowl結成時からこの人がいた影響ってデカいんだろうな…。 次の猛獣も良い。深海とはうってかわって獰猛なパワフルさ。横幅が狭めのROXYのステージでもアクティブです。さらに踊子、尻尾とトーンの違う曲が続き、表現力を存分に見せつけてくれます。 そして予想外の七夕!歌唱に集中して楽しませる曲も用意してくれるのは新体制のいろんな側面を見せようという気概の現れでしょうか。穏やかな気持ちで聞き入りながらも、「君の願いが叶えばいいな」のユニゾンでしんみりと。 後半では二兎、半分とコーレスの楽しい曲が続き、新メンバーもノリノリでこっちのテンションもあがります。 そしてライブでは常連の熱波。人が増えた分「ねっ、ぱっぱらっぱ〜」の動きが華やかで楽しい。ラスサビではタオルをぶん回す!(事前物販でタオル買ってなくて後悔…)続いての平均、五人となるとジャンプもアウトロの回る振りも壮観。 そして新体制の新曲、一雨。本当に良い曲。 日音さんのカウントからスタートするのが熱い (三島のお披露目のときとごっちゃになってました)。何気ないワンフレーズワンフレーズが沁みる。サビ...